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数学問題[※]

『折りカラー編み(OriColorWeave)』斜め編みの高さ

先稿で、折りカラー編みの適用例として縦横二色の斜め編みを説明しました。

最初に底をクロスに作る場合、作ることができる「かご」の高さは (縦+横)/2 の 倍数ですから、縦横の四角数が決まればほぼ決まります。最小値は、バッグとして不自然ではないバランスですので、十分使える値だと思いますが、高さを変えて作ることはできないのでしょうか。

実は、変えられるのです。実際、北欧風市松模様のかごは、式の半分の高さで作りました。そして更に、先に試した横の四角数4・縦の四角数3で、高さを変えて2個、作ってみました。

高さを変えた「折りカラー編み」

高さを変えるには、底のバンドの並びを変えます。並べた縦横の両端、ひとつ変えるごとに、高さがひとつずつ低くなります。

今の例では、(横の四角数+縦の四角数) / 2 である高さは3.5です。上の写真は、左が高さ2.5・右が高さ1.5で作りました。3.5と合わせて、3点のプレビュー図を並べてみましょう。

このように、折り返しの縁のラインを合わせてみると、クロス(格子模様)が同色のブロックに変わっていく位置を、順に底にしている、ということがわかります。

そして、先と合わせて4つのかごの底を並べてみると、こうなります。

折りカラー編みのかごの底

高さによらず、同じ模様が現れてくるのです。考えてみれば、底の辺は、すべて側面が同じドット模様になるバンドの並びで出来ているわけですから、中も同じになって然るべきなのでしょう。でも、最初に作る底が違うので、作ってみるまでわかりませんでした。

内側はこんなです。右の2点は、底が浅いので底までバンドを折り返し、その結果、底と同じ模様になりました。左の2点は、側面の下段でカットしているため最初のクロス(格子模様)が保持されています。

折りカラー編みのかごの内側

どの高さにおいても、左の2点のかごのように高さにプラス3.5で作ることは可能ですから、斜め編みでは、縦・横・高さは任意で、クロスに揃ったかごを折りカラー編みできる、と言えましょう。

上の2点のかごのデータをつけておきます。


側面全体をクロスにする時の バンドの配置ルール:

並べた縦横の両端、ひとつ変えるごとに高さがひとつずつ低くなる

については経験則で、数学的に証明[※]されたわけではありませんが、もうひとつのかごバッグ、横の四角数10・縦の四角数5の例でも同様、ということを示しておきます。

縦横2色のクロス

高さ 7.5 = (10+5)/2

端から1本、高さマイナス1

高さ 6.5 = (10+5)/2 – 1 (端から1本)

端から2本、高さマイナス2

高さ 5.5 = (10+5)/2 – 2 (端から2本)

端から3本、高さマイナス3

高さ 4.5 = (10+5)/2 – 3 (端から3本)

端から4本、高さマイナス4

高さ 3.5 = (10+5)/2 – 4 (端から4本)

『折りカラー編み(OriColorWeave)』とは

ここまで何点か「折りカラー編み」のかごを作ってきましたが、改めて、折りカラー編みとは何なのでしょう。ひとことで言うと、こうです。

バンドを折り返したときに現れる色を活かして 模様を作る編み方

この編み方の特徴は、裏表が同色のバンドを使用することにあります。折り返したバンドの裏面も、表面と変わらずに使うことができるため、意図的に模様の一部として取り入れることが可能になります。

従来、かごを編む際の模様づくりでは、主に表側のデザインのみが考慮されてきました。また、カットされたバンドの端は「縁」として処理する必要があり、折り返して処理する場合は、デザインに影響を与えないよう、次のような方法が取られてきました。

  • 同じ色のバンドに重ねる
  • 裏側に重ねる

折りカラー編みでは、この折り返し部分をデザインの一部として活かし、新たな模様を生み出します。

  • 折り返しによって、バンドの裏面を別の色のバンドに重ねることができる
  • 重ね方を工夫することで、色を変えることも、もとの色を残すことも選べる

このように、最初に作られた模様に「折り返し色」が加わることで、独自のデザインが完成するのが折りカラー編みの特徴です。

さらに、折りカラー編みでは、後から短いバンドを差し色として重ねるのではなく、底から伸びたバンドをそのまま使うため、強度が増し、縁の一体感が生まれます。

適用例

折りカラー編みの一番シンプルな適用例が、縦横二色の斜め編みです。すなわち、縦A色・横B色の二色で底を編み、斜め45度方向に折って立ち上げるパターンです。

底はA色とB色のクロスになっていますが、立ち上げた側面はクロスが崩れます。A色とB色が斜めに組み合わさり、A色B色のクロスだけでなく、A色同士・B色同士のブロック箇所が現れるのです。

折りカラー編みで、特定の高さで縁を作り、一部を外側(表側)に折り返すことで、A色同士・B色同士のブロックをクロスに戻し、外側の側面全体をクロス状態にすることができます。

更に、残り部分を内側(裏側)に折り返すことで、内側の側面もクロス状態にすることができます。そして、外側・内側の両面を折り返せば、側面全体が二重になった編地が作られます。

具体例で見てみましょう。

縁での折り返し

縁の折り返しタイプ

交差する2本が同色の場合(左図)は折り返しても色は変わりませんが、異なる2色が交差する場合は、色を変える(中図)ことも保持する(右図)こともできます。

斜め立ち上げと側面のバンド色

縦のバンドが白、横のバンドが紫で、平編みの例です。左図のように底を作り、黒枠線で示した位置を底として立ち上げて側面を編むと、右図のようになります。底はクロス(格子模様)ですが、側面には同色のブロックが現れます。

全バンドが交差する高さ位置

底を縦と横、別の2色のクロス(格子模様)にした場合、交差したバンドで作られる四角形を単位とすると、側面の高さが

(横の四角数 + 縦の四角数) / 2

定数倍の位置では、全てのバンドが2色の交差状態になります。

上図は、横の四角数4・縦の四角数3で平編みした時の展開図です。上の式に該当する高さの四角数、3.5・7・10.5・14 を例示しています。

折りカラー編み

全バンドが交差する高さ位置をにすると、折り返す時に、全バンドに対して、編み色を変えるかどうかを選ぶことができます。表側(外側)の模様についてであれば、

  • 色を変えるのであれば、外側に折り返す
  • 色を変えないのであれば、内側に折り返す

とすればよいのです。

そして、上図4つののライン、各、赤線と青線で示した部分(=クロス領域の対角線)は、同色ブロックの切り替わり箇所でもあります。なので、このライン上で、赤線ラインもしくは青線ラインのいずれかを外側に折り返せば、側面全てを2色のクロス(格子模様)に戻すことができます。

更に、裏側(内側)についても同じ状態になっており、は赤線ラインと青線ラインで分離していますから、外側に折り返した残りを内側に折り返すことで、内側も2色のクロス(格子模様)にすることができます。

[※]ただし、原理的に、底と側面の格子をすべて連続させることはできません。どこかで調整が必要ですが、位置は選べるので、それぞれのかごに適した場所にすればよいでしょう。

この例、横の四角数4・縦の四角数3で、小かごを作ってみました。高さの四角数7と3.5の2点です。

外側の方が重ね編みしやすいので、横の四角数4に対応した青線ラインで外側に折り返しました。内側にも折り返したのですが、高さ7の方は底まで手が届きにくく、下の方は妥協してしまいましたが。

CraftBandSquare45 のデータです。各、指定位置で折りカラー編みしてください。

二重六つ目のかご

二重六つ目の浅かご」の投稿を見た方から、バッグにしてみたい、というご要望がありました。バッグというと、縁をつけたり持ち手をつけたり…というより、ポイントは、側面に高さをつけたい、ということですね。

そうなのです。実は、浅かごにしたのは、底の編み目がそのままでは側面に続かないから、だったのです。サイズを合わせたひもの幅や本数や立ち上げ位置、色までは作れますが、側面は編み図にはならないのです。

今のところCraftBandHexagonで描画できるのは、全体が一続きの編み目だけです。CraftBandSquareのように、底と側面で変えることはできません。底の編み目がそのまま側面に続くため、立ち上げてできた側面の辺では、3セットの繰り返しは不連続になってしまうのです。

それでも良しとして、欠けた角の部分をスルーしてそのまま絵の通りに編もうとすると、6側面それぞれサイズや編み位置が異なりますから、かなり大変だし面倒くさい。ですから、側面については、段ごとに右綾・左綾という、本来の二重六つ目で編む方がずっと簡単なのです。

ではその側面の編み目、底からの続きは無理としても、アプリで描けるものでしょうか。

  • 方向性があって、
  • 右綾と左綾の両方が含まれていて、
  • 段ごと交互。

これって「麻の葉(単方向)」と同じじゃない? と気付いて、作ってみたのがこちら。

3本ごとに1本を「無描画色」にしたものです。わかりやすいよう色をつけていますが、上下がの段は右綾、上下がこげ茶の段は左綾ですから、二重六つ目。なんと、鉄線編みも麻の葉編みも、中に二重六つ目を含んでいるのです。わかる人には当たり前かもしれないけれど[※] 、今更ながら六つ目ってすごい。

ということで、バッグではありませんが、高さのあるかごを作ってみました。先の六つ目かごが結構実用的だったので、同じ様なサイズにしてみました。側面は全て、上図の編み目です。

二重六つ目のかご

底です。サイズを合わせるのにかなり詰めたため、だいぶ歪んでしまいました。

二重六つ目のかごの底

プレビュー図に、上の側面だけ、編み図を重ねてみました。

データです。全体と底の編み目についてはこちら。目を小さくするため無描画色部分を1本幅にしていますが、何本幅でも可能です。本数を変える場合は、4本1セットの同じ繰り返しを作ってください。

側面の編み目についてはこちら。

鉄線編みの六つ目の作り方

先の続きです。3つに分ける六つ目を大・中・小としましょう。

  • 「大」 … 入れ子の外側、大きい六つ目
  • 「小」 … 大きい六つ目の中に、入れ子になる小さい三角形
  • 「中」 … 大と小を重ねた時の空き位置、「大」と「小」の中間です

まず、作りたい本数や色や模様の鉄線編みのデータを完成させ、ファイルとして保存します。このデータは、等倍に印刷して型紙に使います。

次に、そのファイルのコピーを5点作り、リネームします。そして、それぞれ部分的に、ひもの一部を非表示にします。

非表示にするには、色を「無描画色」に変更すればよいのですが、3点ごとの繰り返しについては、[編集]メニューの[色の繰り返し]を呼び出すと便利です。

変更は次の通りで、亀甲パターンとなる位置です。位置番号については以前の投稿を参照してください。

ファイル名内容横ひも斜め60度斜め120度
big「大」のみを表示
「中」「小」を非表示
+1,+2位置を
「無描画色」
-1,+1位置を
「無描画色」
-1,+2位置を
「無描画色」
small「小」のみを表示
「大」「中」を非表示
-1,+2位置を
「無描画色」
-1,+2位置を
「無描画色」
-1,+1位置を
「無描画色」
big-small「大」と「小」を表示
「中」のみ非表示
+2位置を
「無描画色」
-1位置を
「無描画色」
-1位置を
「無描画色」
inter「中」のみを表示
「大」「小」を非表示
-1,+1位置を
「無描画色」
+1,+2位置を
「無描画色」
+1,+2位置を
「無描画色」
inter-mark「中」を識別色(グレー)にする+2位置を
「グレー」
-1位置を
「グレー」
-1位置を
「グレー」

これらのファイルのプレビュー図を見ながら、六つ目を2枚作り、重ね、残りのひもを差して、底が完成です。

底作成ステップ

上の写真の例では、型紙に貼り付けたまま立ち上げられるよう「うら」つまり内側から見たプレビュー図を印刷しました。

一度見るだけですから、印刷ではなくパソコンの画面を見ながらでよいと思います。また、最後の斜めひもは型紙から外して差しますので、「うら」ではなく「おもて」でもよいと思います。

そして何と、最初に作る「大」と「小」の六つ目は、ひもの交差箇所を貼り付けてしまっても良いのです。貼り付ければ、形が崩れることもありません。

これで、3の倍数の繰り返しでなくても、方向ごと色が違っても、全体にグラデーションかけるような模様でも、六つ目ふたつから開始できます。


鉄線編みでできた二つのかごを重ねてみました。

鉄線編み模様の二つのかご

本体側のかごは辺に長短があり、最長に合わせざるを得なかったため、ふたとしてはちょっと大きめ。3軸だと本数を簡単に変えられないので、サイズはすき間で調整することになりますが、型紙があれば大丈夫です。

参考までに、5点のファイルを添付しておきます。

[※] 上記の数値が唯一かというと、[大][中][小]は入れ替え可能なようですし、亀甲パターンも先の値が唯一というわけではなさそうです。どんな条件を満たせば、六つ目3枚に分離できるのでしょうか。

鉄線編みのかご、3軸織3色パターン

鉄線編み・3軸織の色々な模様のかごが出来ました。並べてみました。

名前が付いているわけですから、いずれも、広く認識されている、よく使われる模様なのでしょう。同じ織り方なのに、違って見えるのも面白いです。

色だけではなく、組み合わせ数や繰り返し数もいくらでも作れますから、模様はもっとあるはず。
CraftBandHexagonを使えば色の組み合わせは容易にシミュレーションできますから、「3方向各3色」のパターンで試してみました。ちなみに、上の写真の中で、「3方向各3色」でできているのは、シックススター(右下)と亀甲(左下)です。

色違いや位置違いは同一視して、異なると思われるパターンは、他に次の3点がありました。

出現する同色パーツは次の3種、

  • ボックス型
  • 山(スターの両断)型
  • 三菱(六つ目のベース)型

作られる模様はいずれかのバーツ3点の組み合わせ[※]であり、すべてボックス型なのが亀甲、すべて三菱型なのがシックススターということのようです。

混合ではなく、すべて山型になる一番右のパターンも、2軍模様としてはありかもしれません。名前は…山の連なりなので「アルプス」とか。図は下向きになってますが。

[※] 組み合わせには条件があるようです。例えば、各1点ずつというのは、数回試したレベルでは出てこなかったのですが、ほんとうに存在しないのでしょうか。