『折りカラー編み(OriColorWeave)』とは
ここまで何点か「折りカラー編み」のかごを作ってきましたが、改めて、折りカラー編みとは何なのでしょう。ひとことで言うと、こうです。
「バンドを折り返したときに現れる色を活かして 模様を作る編み方」
この編み方の特徴は、裏表が同色のバンドを使用することにあります。折り返したバンドの裏面も、表面と変わらずに使うことができるため、意図的に模様の一部として取り入れることが可能になります。
従来、かごを編む際の模様づくりでは、主に表側のデザインのみが考慮されてきました。また、カットされたバンドの端は「縁」として処理する必要があり、折り返して処理する場合は、デザインに影響を与えないよう、次のような方法が取られてきました。
- 同じ色のバンドに重ねる
- 裏側に重ねる
折りカラー編みでは、この折り返し部分をデザインの一部として活かし、新たな模様を生み出します。
- 折り返しによって、バンドの裏面を別の色のバンドに重ねることができる
- 重ね方を工夫することで、色を変えることも、もとの色を残すことも選べる
このように、最初に作られた模様に「折り返し色」が加わることで、独自のデザインが完成するのが折りカラー編みの特徴です。
さらに、折りカラー編みでは、後から短いバンドを差し色として重ねるのではなく、底から伸びたバンドをそのまま使うため、強度が増し、縁の一体感が生まれます。
適用例
底はA色とB色のクロスになっていますが、立ち上げた側面はクロスが崩れます。A色とB色が斜めに組み合わさり、A色B色のクロスだけでなく、A色同士・B色同士のブロック箇所が現れるのです。
折りカラー編みで、特定の高さで縁を作り、一部を外側(表側)に折り返すことで、A色同士・B色同士のブロックをクロスに戻し、外側の側面全体をクロス状態にすることができます。
更に、残り部分を内側(裏側)に折り返すことで、内側の側面もクロス状態にすることができます。そして、外側・内側の両面を折り返せば、側面全体が二重になった編地が作られます。
具体例で見てみましょう。
縁での折り返し

交差する2本が同色の場合(左図)は折り返しても色は変わりませんが、異なる2色が交差する場合は、色を変える(中図)ことも保持する(右図)こともできます。
斜め立ち上げと側面のバンド色

縦のバンドが白、横のバンドが紫で、平編みの例です。左図のように底を作り、黒枠線で示した位置を底として立ち上げて側面を編むと、右図のようになります。底はクロス(格子模様)ですが、側面には同色のブロックが現れます。
全バンドが交差する高さ位置

底を縦と横、別の2色のクロス(格子模様)にした場合、交差したバンドで作られる四角形を単位とすると、側面の高さが
(横の四角数 + 縦の四角数) / 2
の定数倍の位置では、全てのバンドが2色の交差状態になります。
上図は、横の四角数4・縦の四角数3で平編みした時の展開図です。上の式に該当する高さの四角数、3.5・7・10.5・14 を例示しています。
折りカラー編み
全バンドが交差する高さ位置を縁にすると、折り返す時に、全バンドに対して、編み色を変えるかどうかを選ぶことができます。表側(外側)の模様についてであれば、
- 色を変えるのであれば、外側に折り返す
- 色を変えないのであれば、内側に折り返す
とすればよいのです。
そして、上図4つの縁のライン、各、赤線と青線で示した部分(=クロス領域の対角線)は、同色ブロックの切り替わり箇所でもあります。なので、このライン上で、赤線ラインもしくは青線ラインのいずれかを外側に折り返せば、側面全てを2色のクロス(格子模様)に戻すことができます。
更に、裏側(内側)についても同じ状態になっており、縁は赤線ラインと青線ラインで分離していますから、外側に折り返した残りを内側に折り返すことで、内側も2色のクロス(格子模様)にすることができます。
[※]ただし、原理的に、底と側面の格子をすべて連続させることはできません。どこかで調整が必要ですが、位置は選べるので、それぞれのかごに適した場所にすればよいでしょう。
この例、横の四角数4・縦の四角数3で、小かごを作ってみました。高さの四角数7と3.5の2点です。

外側の方が重ね編みしやすいので、横の四角数4に対応した青線ラインで外側に折り返しました。内側にも折り返したのですが、高さ7の方は底まで手が届きにくく、下の方は妥協してしまいましたが。
CraftBandSquare45 のデータです。各、指定位置で折りカラー編みしてください。
PPバンド・北欧編み2色のかごバッグ
木目調のPPバンドで編む北欧風の市松模様、なかなか良い雰囲気です。ならばもっと活かしてみましょう。バッグです。
持ち手はサスペンダーで外付けしました。幅広なので丸編みの持ち手を括り付けにくいというのもあるのですが、内側も市松模様で揃っているのを崩したくなくて。端のない均一な編地です。

この編み方、今まで ‘折り返し色のテクニック’ と書いてきましたが、もう少し短く、わかりやすいよう「折りカラー編み(OriColorWeave)」と名付けました。バンドを折り返したときの色を活かして模様を作る編み方だからです。
そしてこの折りカラー編み、先の最後に書いたように、今回は少し変えてみました。
- 横の四角数(多い方)に対応した折り返しを、内側ではなく外側にする
- 底での端の始末を、辺ではなく「底の中央線」位置で調整する
1.は、実際、編みやすかったです。
2.は、1.の編み方の帰結として、外側の端は 底の長辺側で始末することになります。長辺ですから、辺ではなく中央部分まで重ねた方が自然な感じになるのです。
ドット模様のバッグと比べると、側面は全て二重の市松模様(ドット模様)ですから、どちらも同じ。でも、底の模様(模様と呼ぶならばですが)は異なります。そして、こうやって並べてみると、内側と外側が同じ模様になるのが面白い。一重の裏表ではなく二重の所以ですね。

四角数8・4・6、約34×17×26センチのLサイズです。2色 のバンド、各30メートルからの残りを使い切りました。中央部分まで伸ばせるよう「ひも長加算(一端)」の値は大きめに設定しましたが、そもそも全体が二重ですから、一重の1.7倍ほどのバンドが必要です。
データは倍の高さで作っていますので、半分の高さで折り返してください。下図は[プレビュー2]に追記したものですが、縁は、赤線が外側・黒線が内側です。また、底については、切り替え箇所(底の中央線)を、赤線で示しています。

データです。持ち手は含まれていません。先と同じ設定ファイルを参照します。
PPバンド・北欧風市松模様のかご
折り返し色のテクニック、幅広のバンドで試してみました。バンドで作られる菱形のサイズも大きくなり、ドットというより市松模様です。
縦横の四角数が4・高さが2です。折り返し位置が式の半分でできるよう、底の編み目を調整しました。数は少な目ですが17センチほどの大きさです。

使用したのは、ウッドスタイルPPバンドの<W>で、普通のPPバンドの倍の幅です。’白木’と’ウォールナット’ を使いました。折り目をつけても復元して丸い形になりました。
内側と外側は完全ではありませんが、側面は市松なので、市松模様のかごと言っていいのではないでしょうか。

[プレビュー]の底編み図はこんなです。

[プレビュー2]は倍の高さの図ですので、縁の高さは半分の位置です。追加で赤線と黒線を加えていますが、それぞれを内側もしくは外側に折り返します。対称なのでどちらでも可です。

データです。追加したバンドの種類「PPバンド(W幅)」を使っています。
設定ファイルです。
PPバンド・斜め編みドット模様のかごバッグ
折り返し色のテクニック、先には縦横同数でしたが、縦横を変えてかごバッグを作りました。斜め編みで、全面ドット模様です。サイズは先稿に書かれていた例の通りで、Sサイズになります。
- 横の四角数 10個
- 縦の四角数 5個
- 高さの四角数 7.5 = (10+5) / 2

内側も底まで折り返していますので、外側も内側もドット模様です。

底編みは縦横です。

作り方は「斜め編み2色のドット模様の作り方」の通り。外側への折り返しは四角数5個分(=縦の四角数)、内側への折り返しは10個分(=横の四角数)、×2です。
Sサイズのかごなので、内側を底まで折り返すのはちょっと大変でした。最終的に内側も外側もドット模様にするのであれば、サイズによっては外側を10個分・内側を5個分の方が作り易いかもと思いました。
また、底は辺から1段のところでカットしているため幅広のラインが作られていますが、底の中央線まで伸ばしても良いと思います。
データです。倍の高さ15で作っていますが、7.5で折り返してください。
追記
「折りカラー編み」の例、手順書を動画にしました。
手順書のpdfです。
動画内で使っている、底だけの型紙のpdfです。
斜め編み2色のドット模様の作り方
では、斜め編み2色のドット模様のかご、どう作ったのでしょうか。
同じ模様のかごは、以前に「斜め組み編み2色のドット模様」として作ったことがあります。その時は、底を編むときに2色のバンドを重ねることで、底から上と下・左と右のバンド色を変えました。
今回は編み図で示したように、底はそのまま縦横に編むだけですが、バンドがほぼ倍の長さになっているのがわかるでしょうか。そう、側面をまるごと折り返したのです。折り返したバンド色を考慮する、折り返し色のテクニックです。
現対象は、横の四角数・縦の四角数・高さの四角数ともに6点の立方体です。
下図は、折り返し分の高さ6個分、つまり高さ12にした[プレビュー2]の図です。そのまま平編みすると、次のように、ピンクと白、6本ずつのブロックが作られます。

前面と背面の赤線の位置が、外側に折り返す部分です。左面と右面の縁は内側に折り返します。順に見てみましょう。
1. 側面を編みます
2. 外側、最初のバンドを折り返して編みます
3. 外側、次のバンドを折り返して編みます
4. 外側、バンドの端の始末をします
5. 内側に折り返して編み、端の始末をします
完成すると側面全体が二重、つまり4本のバンドが重なった状態になりますから、かなりしっかりした感じの編み地になります。
外側・内側ともに、折り返すことで初めは同色のブロックだった箇所が、格子に置き換わるのです。外側の模様だけ作ればよいのであれば、5.の内側への折り返しは底までではなく最小限にする、というのもありでしょう。
では、この折り返し、縦・横・高さが同じでないと出来ないのでしょうか。他の数では作れないのでしょうか。
結論から言えば、こんな条件になります。
- 縦の四角数、横の四角数は任意。同じでなくてもよい
- 高さの四角数は (縦の四角数+横の四角数) / 2 であること
底でバンドを重ねる方法では、縦横が異なる例として、横の四角数10個・縦の四角数5個の図を示していました。この数で、試してみましょう。