折りカラー編みが特許として認められました

正確には、「折りカラー編み」としてではなく、その最もシンプルな適用例である「籠」としての出願ですが、今までにない編み方であることが正式に証明されたと言ってよいと思います。

出願にあたり、ご教授・相談・アドバイス・チェック・手続きまでご支援くださった INPIT京都府知財総合支援窓口の皆さまに、心よりお礼申し上げます。そして、書類作成を助けてくれたAIにも。

そして、特許を取ったのは、かご編みに携わる皆さまに使っていただくためです。
制限したいからではありません。

折りカラー編みについては、最初のアイデアが3月、出願が5月末です。その間、正方形、長方形、そして高さを変えてと適用範囲を広げつつ、またその試作や検証・命名のプロセスはすべてブログで公開してきました。特許出願を決めたのは、考え方、計算式、適用方法がまとまり、手順書やYouTube動画として公開した後のことです。

本来、「世に知られていないこと」が特許の前提ですから、ここまで公開してきたものは難しいと言われました。それでも「新規性喪失の例外」を適用すれば可能性はあるということで、公開の証明書を山ほど添付しながら出願しました。

では、なぜそこまでして出願したのか。
理由は、誰も、新しい編み方だと思ってくれなかったからです。

何十人もの方に、試作品をお見せし、使ってくださるという方には差し上げてきましたが、編み方について尋ねられたことは一度もありません。疑問は皆無。私にとっては「今までにない」のに、皆さんには「よくある普通のかご」「あたりまえの格子模様」でしかないらしいのです。

あまりの“普通” 扱いに、改めて、完成したかごを見ると、内側も外側も同じ編み目が続き、不自然な継ぎ目も、難所もありません。模様の変化を見ながら作った私と、完成品だけを手にする方との間に、認識の差があるのだと気付きました。

折りカラー編みは完成した技法ではなく、まだ可能性の“種”の段階にあると思っています。実際、出願後も、別の配置パターンが見つかったり、他の模様に応用できることがわかりました。編む方が増えれば、もっといろいろなアイデアが出てくるでしょう。

でも、よくある普通のかごなんて、誰もわざわざ作ろうなんて思いません。だからこそ、特許という形で「これは新しい編み方なのですよ」と示すことが、
“それなら一度試してみようか”
と思ってもらうきっかけになると考えました。

今回の特許は、技法を縛るためではなく、“新しい” と気づいていただき、試してみようと思っていただくためのものです。かご編みにおけるひとつの“種”として、自由な発想で試し、育てていただければ嬉しいです。

そしていつか、この編み方が手法の一つとして自然に使われる、特別ではない、「普通の編み方」となる未来を、静かに夢見ています。

幅で色を変えた貼りかご

幅を変えた貼りかごと同じ型で、縦横・側面ともに、6本幅のバンド色を白に変えてみました。横ラインです。

幅で色を変えた貼りかご

上に重なる縦ラインの色はそのまま、下はすき間から見えるだけですから、外側は交互色の横ライン、内側は交互色の縦ラインです。でも、縦横ともに色が変わっていると、上に重なるバンド同士より、上と下であっても同色のバンド同士の方のつながりが見えてくるのが面白いです。

このかごも、フラップ部分の重なりを3本として、それら全体を貼り合わせました。内側が縦ラインなので、貼り合わせ箇所があまり目立ちません。

底も、幅ごとの2色になっています。

幅で色を変えた貼りかごの底

さて、ここまでいくつか貼りかごを作ってみて思ったのは、同じ紙バンドで同じサイズのかごを作れるけれど、編みかごとは全く違うカテゴリーにあるということです

広く平らな作業台に、正確な貼り付け作業。ゆらぎのある凹凸ではなく、シャープに揃った幾何学的な平面。

できたかごは、厚紙の箱とは違い通気性があって、強度が高い紙バンド材なので、しなやかで軽い。そして、バンドは色や幅を変えることができますから、その組み合わせとなると無限大です。

これも紙バンドという素材の活用方法であり、編むことが苦手な人でも、子どもでも、紙工作感覚で作れるでしょう。個人的には、シャドウボックス風が面白いと思いました。精度を出すための手間を考えると、作るのは躊躇してしまいますけれど。

プレビュー図です。

データです。

縦横で色を変えた貼りかご

幅を変えた貼りかごと同じ型で、側面のバンド色を白に変えてみました。

縦横で色を変えた貼りかご

上に重なる縦ラインの色はそのまま、下はすき間から見えるだけです。内側は全面、白のラインになりました。編みかごであれば交互色になるところ、完全分離という貼りかごならではの模様になりました。

フラップ部分の重なりを3本として、それら全体を貼り合わせて薄く重なるようにしました。底は縦横ともに同じ色です。

縦横で色を変えた貼りかごの底

プレビュー図です。

データです。

幅を変えた貼りかご

貼りかごもあり、ということで違うサイズで作ってみました。12本幅と6本幅を交互にした縦ラインです。きれいに目を空けるのは、編みかごでは難しいでしょう。

幅を変えた貼りかご

フラップ部分を外側にして重なった個所を貼り付けました。写真では、左側の側面です。間に1~2ミリ空いているので、真正面だと目が重なるのですが、斜めからだとバンドが重なって見えます。シャドウボックスのような立体感も面白いのですが、貼りかごらしいのは、すっきり薄い右側の側面でしょうか。

底です。

幅を変えた貼りかごの底

データです。

編みかごと貼りかご

接着剤なしで和紙を編んで箱をつくってみたわけですが、伝統的には、和紙は厚紙や竹枠に貼り付けるのが普通の方法でした。”編む”ならば予めテープにした状態、つまり紙バンドからでした。でも、ネット通販サイトを見ていたら、紙バンドを貼り合わせて作ったかごが販売されていました。貼らずに編む、それが、編まずに貼る?

編まずに作れるなんて!! 考えたこともありませんでした。ずっと編み目ありきで、編み目のない行や列は警告対象としてきたのに。でも、そう、紙ならば、編み目がなくても、貼り合わせることができるのです。

ということで、作ってみたのがこちら。同材料・同サイズ・同間隔で、左側が従来の四つ目のかご、右側が貼り合わせて作ったかごです。

編みかごと貼りかご

編みかごは折って立ちあげてから側面を編みますが、貼りかごは全体を平たく貼り合わせてから、折って立ち上げ、フラップ部分を貼り合わせます。型紙に合わせる、特に側面は、圧倒的に、貼りかごの方が作りやすい。

でも、手持ちのバンドは、平たく貼ろうとすると、直線ではなくゆるやかにカーブしているのです。型紙に合わせて補正しつつ、全交差箇所に、十分量のボンドをのせるのが結構大変でした。適切な素材もテクニックも必要で、きれいに作るのはなかなか難しいことがわかりました。

貼りかごは、縁もそのまま1本を貼り合わせただけなので、少し丸い形になりました。また、貼り合わせだと縦横が交差しないので、縦ラインもしくは横ラインのテクスチャになりますが、今回は垂直ひもの端が外から見えないよう、横ラインにしました。

編みかごと貼りかごの底

編みかごは、編み目自体を固定しているわけではないので、力がかかると多少交差位置がずれますが、貼りかごずれはありません。全交差箇所が完全に固定されていますから、編まれていない=弱いわけではない。柱&梁で支えるのとツーバイフォーの違いのように、構造が異なるのです。それぞれの構造に合った使い道がある、ということなのでしょう。

編みかごのプレビュー図です。縁を折り返しています。

貼りかごのプレビュー図です。これを型紙にして、上の側面・下の側面に、それぞれ左右に4本分、垂直方向のバンドを加えて水平方向の編みひもを伸ばしフラップにしました。

編みかごと、貼りかごのデータです。