斜め四つ畳み編みのクラッチバッグ

最後にもうひとつ、斜め四つ畳み編みの応用として、本体と一体型のカバー(フタ)がついたクラッチバッグを作ってみました。

斜め四つ畳み編みのクラッチバッグ

CraftBandKnotでは、横ひもに対して「ひも長加算(左)」「ひも長加算(右)」、縦ひもに対して「ひも長加算(上)」「ひも長加算(下)」をそれぞれ個別に設定できます。これまでの工法比較記事では、最適長に値を加えて「同一長」にするために使ってきましたが、本来は特定の位置に持ち手や留め具を付けたり、カバーや非対称な造形など、何らか手動でひもを追加・延長することを想定した機能です。そこで今回は、この本来の機能を使ってみたのです。

ただ、機能自体は「ひもごとに、追加する長さを入力する」というシンプルなものです。そのため、どの位置にどの長さを加えるのかは、作りたい形に合わせてすべて手動で計算してセットする必要があります。

今回は、プレビュー図に追加したいコマの図を描き加え、それが底編み時のどのひも(縦ひもの上下・横ひもの左右)に由来するのかを1本ずつトレースして、ひも長加算に割り振りました。

カバー用のコマ追加計画
カバー用のコマ追加計画

加算する長さはシンプルに、「要尺 × 追加コマ数」です。今回の設定では1コマの要尺が42.3mmでしたので、2コマなら84.6mm、3コマなら126.9mm……といった要領で数値をセットしていきました。

ひも長加算値として入力
ひも長加算値として入力

選択した工法は「③ 開始ライン編み」です。

今回のようにひもの長さや突き出し位置が非対称になると、二つ折りや中心合わせといった幾何学的なアプローチは使えません。でも「開始ライン編み」であれば、どんなにひも長がバラバラでも「開始ライン図」にデータ通りの正確な数値(最初の行と列を編む位置)がそのまま算出されるからです。このようなイレギュラー設計では、事実上この工法が一択になります。

色も部分的に変えたため、カットリストは全部で16種類になりました。このカットリストをもとにバンドをどう切り分ければ最も無駄が出ないかは、ひもリスト出力をAIに渡して立案してもらいました。「1次元ビンパッキング問題」であり「完全に計算可能」だそうです。

その後、Webページ形式にまとめてもらったのが以下です。

カット時には、切り出したひもを確実に識別するため、カットしたバンドの端にペンで記号(カットリスト番号)を記入しました。

四つ畳み編みは「輪にひもを通して引き締める」という結びの動作を行うため、作業用の余裕分(目安として要尺1コマ分程度)が手元に必要です。長さに余裕を持たせている場合はそれで編めますが、縁の処理まで計算された正確な最適長で組む場合は、この作業余裕分を「ひも長加算(縦横端)」で確保しておく必要があります。

裏を返せば、作業用の余裕を持たせたひも端は「最後に必ず切り落とされる」ということです。そのため、端に直接ペンで記号を書いても完成品には一切残りません。

プレビュー図に表示される記号と手元のひもを見比べながら編み進められるため、取り違え防止にとても効果的でした(今回は片側だけに書きましたが、両端に書いておけばさらに対照しやすかったと思いました)。

箱形状まで編み上げたあとは、データ上には表示されないものの、あらかじめ加算しておいた余長を使って予定通りのコマ数を編み進め、カバー部分を完成させました。最後にホックを付けました。


今回はクラッチバッグのフタを例にしましたが、この考え方はさまざまな形状に応用できます。追加したい形を「コマ数」として展開図に落とし込めば、両開きのフラップや持ち手、留め具、アシンメトリーな装飾など、あらゆる造形も同じ手順(ひも長加算 × 開始ライン編み)で無駄なく形にできます。自由な作品づくりの設計アプローチとして、ぜひ応用してみてください。

この作品の構造データ(knot形式)です。ひもの色の配置や本数など詳細がセットされています。縁の始末は「コマ間を渡し山形にクロスさせて裏に折り込む(斜め編み)」です。

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