「ファブ」カテゴリーアーカイブ

デジタルものづくり

レベル2-クロスベース模様のカテゴリー

さて、ここまで、レベル1のステッチ、および2015年までの書籍に見られたステッチを見てきました。続いて、2021年頃からの再ブーム以降の書籍に見られるパターンを見ていこうと思います。

近年の書籍に掲載されている作品は、バンド色や後差し配置を複雑に組み合わせてデザインされていますが、その構成要素を分解し、「単位となる模様」だけを取り出してみると、多くは「クロス模様」構造——すなわち、水平ないし垂直に通したレベル1のバンドに、45度・135度方向でレベル2のバンドを通すタイプ——をベースとしていることが分かります。

編み方や差し方そのものは共通であり、バンドの色構成によって違いを生み出している点は、編み組織そのもののバリエーションを作ってきた伝統的なかごとは異なる方向性です。これは、カラフルなPPバンドという現代素材ならではの装飾的展開といえるでしょう。また後差しについても、当初は固定する感覚が強かったものが、差し込むだけで十分に保持され問題ないことが経験的に理解されてきた結果、より自由に用いられるようになってきたと考えられます。

クロス模様をベースとした模様を分析するにあたり、単位全体のサイズは 4×4 とします。基本となるレベル0とレベル1は 2×2 単位としますが、クロスするレベル2構造は 2×2 には各方向1点しか存在しません。そのため、最小の組み合わせとして縦横2倍の領域、つまり 4×4 を単位として整理しています。

▼ 模様の単位と条件

  • 使用色:A色・B色の2色
  • レベル1:水平方向の2本(※垂直方向については転置扱い)
  • レベル2:45度・135度方向ともに同じ配色の2セット
  • 単位サイズ
    • 模様全体の単位は 4×4
    • ただし、ベース(レベル0,1)は 2×2 単位の繰り返し

▼ 模様コードによる分類

レベル1の時と同様に、色並びのコードを使って分類します。
先には「(レベル0:ベース) – (レベル1:縦横)」の構成でしたが、今回は、レベル1は片方向のみ、レベル2の斜め方向が加わるため、コードは以下のような構成になります。

(レベル0:ベース 4文字) - (レベル1:縦 2文字) - (レベル2:斜め 2/4文字)
コード構造

▼ ベース(レベル0)のカテゴリー

A色・B色の反転や回転・対称性を考慮して、以下の6点をベースにします。

ベースのカテゴリー6タイプ
  1. AAAA 単色
  2. BBAA 格子
  3. ABAB 横ストライプ(レベル1と同方向)
  4. BAAB 縦ストライプ(レベル1と直交方向)
  5. BAAA ギンガムX1(1/4色でクロス)
  6. AAAB ギンガムX3(3/4色でクロス)

これらをカテゴリーとして、順に、そのカテゴリーに属する模様をみていきたいと思います。

後差しひもの幅 : 1/2, 1/4 そして 1/3へ

最初のレベル2ステッチ「クロス模様では、以下の幅のバンドを使用しています。

  • レベル1:1/2幅
  • レベル2:1/4幅

なぜこの組み合わせになったのか、その理由を当時の背景とともに紐解いてみましょう。

まず、土台となる「レベル1」についてです。既に持ち手などに1/2幅のバンドが使われていましたから、レベル1に同じ1/2幅を採用するのは自然な流れでした。

次に、そこに重ねる「レベル2」がなぜ1/4幅なのかという点です。これにはスペースと道具という2つの理由があります。

物理的なスペースの問題として、1/2幅で埋まっている場所に、斜め方向からさらに同じ1/2幅を通す余裕はありません。必然的に、それよりも細いバンドが必要になります。

そしてもう一つは、2014年当時の道具の事情です。 当時はハサミや自作の道具でカットしていたため、正確に3等分(1/3幅)にするのは難しかったでしょう。一方で、バンドを半分に折ってカットするのは簡単です。つまり、1/2幅をさらに半分にした1/4幅を作るのが、手作業において最も合理的で確実な方法だったのです。


しかし、現在は状況が異なります。 2023年から2024年にかけて、PPバンドを簡単に等幅に割ける、PPバンドカッターなどと呼ばれる専用ツールが発売されたからです。これにより、以前は難しかった「1/2幅」「1/3幅」「1/4幅」といった細かい調整も、誰もが手軽に行えるようになりました。

では、道具の進化により「1/3幅」という選択肢が加わった現在、実際にどのような組み合わせが可能なのでしょうか。

まずは、数値的な側面から検証してみましょう。 15mm幅のPPバンドを使用した場合、ベースとなる「押さえのひも(レベル1)」と、斜めに通す「クロスひも(レベル2)」の間に、どれくらいのスペースがあるかを計算したのが下の図です。

クロスにバンドを通す時のひも幅ごとの余裕値を計算した表
クロスにバンドを通す時のひも幅ごとの余裕値

表の数値は、バンド同士の「余裕値」を示しています。これがマイナスになっている箇所は、物理的にスペースが足りずひもが重なる、つまり通らないことを意味します。プラスであっても、小さければ通しにくい。また、大きすぎる場合は可動領域が広い、つまりずれやすいことを意味します。

この数値だけではイメージしづらいかもしれませんので、バンド間のすき間を0.5mmに設定した状態を、図で可視化してみましょう。

すき間値を0.5mmとしたとき、クロスと押さえのバンドの図
すき間値を0.5mmとしたとき、クロスと押さえのバンドの図

「1/2幅」のベースに対して、「1/4幅」は通しやすくずれにくい絶妙な値です(上段・右列)。でも同じ「1/2幅」をクロスさせようとすると、大きく重なってしまい通すことができません(上段・左列)。

一方で、これまで難しかった「1/3幅」であれば、1/2幅のベースに対してもなんとか通すことができます。さらに、「1/3幅 × 1/3幅」同士の組み合わせ(中段・中央列)であれば、従来の「1/2幅 × 1/4幅」と同じような感覚で、無理なく通せることがわかります。


では、実際に作品にした場合、見た目はどう変わるのでしょうか?
最もポピュラーな「花模様」を例に、3つのパターンを比較してみます。

左から順に以下の組み合わせです。

  • 左:1/2幅 × 1/4幅(従来の基本スタイル)
  • 中:1/3幅 × 1/3幅(均等なバランス。柔らかな印象)
  • 右:1/4幅 × 1/2幅(クロスを太くした逆パターン。明確な分離)

※画像ではレベルごと同じ幅にしていますが、色ごとに幅を変えればさらに表情が変わります。

長らく「1/2幅 × 1/4幅」が基本とされてきましたが、それは絶対的なルールではありません。 道具が進化し、選択肢が増えた今、作りたい模様の雰囲気や好みに合わせて、ひも幅の組み合わせも選べるのではないでしょうか。

レベル1-縦横ステッチのバリエーション

これまで、窓模様梁模様など、ベースに対して縦横にひもを差すパターンをいくつか試作してきました。いずれも平編みの「2×2単位」に「2色(A/B)」です。この最小条件において、他にどのような模様があるのか、組み合わせ画像を作ってみました。

条件は以下の通りです。

  • レベル0 – ベースの柄: 単色 / 格子 / ストライプ / ギンガムチェック
  • レベル1 – 後差しひも: 水平ひも・垂直ひも、ともにA色もしくはB色

実際にかごをデザインする際は、全体としての色並びや差し位置をつくりますが、部分を構成する「単位(ユニット)」にどのような図柄があるのか。 そのバリエーションが「模様のカタログ」としてリストアップされていれば、参考になるでしょう。

※実のところ、リストアップしながら、え?こんなにあったの?と思いました。でも、改めて考えれば、4×4×4×4ですからむしろ当たり前の数。やってみるものですね。

単色ベースのステッチ

※A色ベース。シフトした図柄のみをまとめ、転置した図柄は別扱いとしています。

水平ひもの並び(↑)垂直ひもの並び(→)パターンコード / 名称
AAAAAAAA-AAAA
AA
AA
AB
BA
AAAA-AAAB
AAAA-AABA
AABBAAAA-AABB
AB
BA
AA
AA
AAAA-ABAA
AAAA-BAAA
ABABAAAA-ABAB
AB
BA
BA
AB
AAAA-ABBA
AAAA-BAAB
AB
BA
BB
BB
AAAA-ABBB
AAAA-BABB
BABAAAAA-BABA
BBAAAAAA-BBAA
BB
BB
AB
BA
AAAA-BBAB
AAAA-BBBA
BBBBAAAA-BBBB
井桁(いげた)模様
Grid Pattern
単色ベースのステッチ

格子ベースのステッチ

※格子のABを入れ替えると、転置した図柄になります。

水平ひもの並び(↑)垂直ひもの並び(→)パターンコード / 名称
AAAABBAA-AAAA
AA
AA
AB
BA
BBAA-AAAB
BBAA-AABA
AABBBBAA-AABB
梁(はり)模様
Beams Pattern
AB
BA
AABBAA-ABAA
BBAA-BAAA
AB
BA
AB
BA
BBAA-ABAB
BBAA-BABA
AB
BA
BA
AB
BBAA-ABBA
BBAA-BAAB
AB
BA
BB
BB
BBAA-ABBB
BBAA-BABB
BBAABBAA-BBAA
BB
BB
AB
BA
BBAA-BBAB
BBAA-BBBA
BBBBBBAA-BBBB
格子ベースのステッチ

ストライプベースのステッチ

※横ストライプのリスト。縦ストライプについては転置&シフトした図柄となります。

水平ひもの並び(↑)垂直ひもの並び(→)パターンコード / 名称
AAAAABAB-AAAA
窓(まど)模様
Windowpane Pattern
AAABABAB-AAAB
AABAABAB-AABA
AABBABAB-AABB
ABAAABAB-ABAA
ABABABAB-ABAB
ABBAABAB-ABBA
ABBBABAB-ABBB
BAAAABAB-BAAA
BAABABAB-BAAB
BABAABAB-BABA
BABBABAB-BABB
BBAAABAB-BBAA
BBABABAB-BBAB
BBBAABAB-BBBA
BBBBABAB-BBBB
ストライプベースのステッチ

ギンガムチェックベースのステッチ

※左下が1のリスト。隣が1の場合は、転置&シフトした図柄となります。

水平ひもの並び(↑)垂直ひもの並び(→)パターンコード / 名称
AAAABBAB-AAAA
連窓(れんまど)
Linked Window Pattern
AAABBBAB-AAAB
AABABBAB-AABA
AABBBBAB-AABB
ABAABBAB-ABAA
ABABBBAB-ABAB
ABBABBAB-ABBA
ABBBBBAB-ABBB
BAAABBAB-BAAA
BAABBBAB-BAAB
BABABBAB-BABA
BABBBBAB-BABB
BBAABBAB-BBAA
BBABBBAB-BBAB
BBBABBAB-BBBA
BBBBBBAB-BBBB
ギンガムチェックベースのステッチ

なお、編み目については、左下は垂直方向がover/水平方向がunderで固定です。
コードは、「(レベル0:4文字) – (レベル1:4文字)」のような形式で、以下の順で対応する色(A/B)が入ります。

コードで編み方が決まります。反転・回転した図柄を作りたければ、元のコードを指定して、AIに変換を依頼すると良いでしょう。

レベル1-縦横ステッチで作ったかごの例
レベル1-縦横ステッチで作ったかごの例

Fab Your Vibe! – バイブコーディングで遊んできました

FabCafe Kyoto のイベント『Fab Your Vibe! – バイブコーディングで遊ぼう vol.2』に参加してきました。こんなイベントです。

Claude Code、Cursor、CodeX などのAIコーディングツールを利用して、アイディアを形にしてみましょう。ルールはひとつ。コードを一切書かないこと。

どこで、なにに、どんなコーディングをしてもらって、どうやって動かすの?レベルでしたが、例をみせてもらって、そもそものところからAIに教えてもらいつつ、何とか進めることができました。

最後に、参加者の皆さんが作られたアプリを見せて頂いたのですが、画像や動画や地図、音楽・ショートストーリーにゲームと、ちゃんと動くし、組み合わせがリッチ。全部AIが教えてくれたんですよ、と言いつつも、その人にしか表現できないこだわりが形になっているのです。人間も、AIも、すごい。

さて私。このマルチメディアの時代にレガシーとは思いつつ、趣味は籠ですから、籠のアプリを作ってもらいました。ヤバい事故も起こしかけて、早い段階で気づけてよかったね、なんて、慰めなのか自己正当化なのかわからないコメントももらいつつ。

説明より描かせたい画像を見せるといいよ、などいろいろ教えていただいたスタッフの皆様、ありがとうございました。その後、仕様簡略化&修正を加えてできたのがこちら。

スマホでも動きます。試してみてください。

プラかごの後差し模様(ステッチ)の体系と進化

先に「ピクセル絵」として、短いバンドをドットのように差し込み、絵を描く手法を紹介しました。しかし、実際のプラかご作りにおいて、より広く使われているのは、長いバンドを側面全体に通して幾何学的な模様を描き出す装飾技法です。

本サイトでは、この技法を「後差し模様」ないしは「ステッチ」と呼び、順を追ってその組み合わせを見ていきたいと思います。それに先立ち、なぜこの技法が生まれたのか、どのような仕組みで成り立っているのか、その全体像を整理します。

1. すき間から表面へ:PPバンド独自の進化

竹細工や籐細工における伝統的な「差しひも(透かし編み装飾)」は、六つ目編みや四つ目編みなどの「編み目のすき間(目)」にひもを通す技法でした。

一方、PPバンドで作るプラかご(主に平編みベース)では、目ではなくバンドの表面に重ねて差し込みます。これは、PPバンドという素材が薄く、滑りやすいからこそ可能になった、独自の進化形と言えます。紙バンドのように編み目や幅自体を変えることが難しい代わりに、薄いバンドを層のように重ねることで装飾性を高める道を選んだのです。

2. 構造のレベル分類:支点のルール

滑りやすいバンドを固定するためには、単に重ねるのではなく、既にあるバンドを支点として利用する必要があります。この「何に留めるか(依存関係)」によって、模様の構造は以下のレベルに分類できます。

  • レベル0(フレーム): ベースとなる平編みのかご本体。
  • レベル1(直交・シフト積層): フレーム(Lv.0)を支点として差し込む層。
    • 基本: 水平・垂直方向(0度・90度)に重ねる。
    • 変則シフト: 「横1マス・縦3マス」のように座標をずらして通すことで、72度・108度、「横3マス・縦1マス」で18度・162度などの角度で通す。
    • ループ(鱗状): フレームのバンドに対して「巻き付ける(ループする)」ことで立体化し、その連続で模様を作る。※斜めに進みますが、足場はあくまでフレーム(Lv.0)であるため、構造上はレベル1の亜種に分類されます。
    • ピクセル絵も構造的にはこのレベル1に属します。
  • レベル2(斜交積層): レベル1のバンドを支点として差し込む層。
    • レベル1でできた浮きや交差を利用することで、45度・135度方向への配置が可能になります。レベル1の足場がないと成立しないため、工程順序は不可逆です。
  • レベル3以降: レベル2以上のバンドを支点として、さらに複合的に編み込む層。

3. 文献に見る技法の変遷

2010年代前半からの関連書籍を紐解くと、この「レベル」が段階的に活用され、補強目的から装飾表現へと進化していった過程が見て取れます。

黎明期:補強としてのレベル1 最初期の文献である高宮紀子の著書[1][2](2013-2014年)では、全60作品中、バンドを重ねる技法はわずか2点のみです。

  • 文献1(p.75, 90): 全面に同方向のバンドを重ねる作例が見られますが、これは模様というより、薄いバンドの強度を補うための「二重化(補強)」としての意味合いが強く、レベル1の初期段階と言えます。

過渡期:装飾表現の開拓とレベル2の登場 2014年頃、紙バンド・PPバンド手芸の第一人者として現在も活躍する古木明美の著書が登場することで、表現の幅が一気に広がります。古木明美の著書[3](2014年)では、紙バンド手芸で培われたデザイン感覚が持ち込まれ、以下の重要な技法が確認できます。

  • ピクセル技法(風車模様): 田の字の4ピクセルに三角を作る「風車模様」が複数の作品で使われています。これは短いバンドで面を埋める技法であり、構造的にはレベル1ですが、幾何学的な絵柄を描くという装飾的な意図が明確です。
  • レベル2の実践: 同書(p.37)の「赤×白ステッチのバスケット」では、水平に通した赤バンド(Lv.1)の上から、白の細幅バンドを45度・135度で交差(Lv.2)させる構成が登場します。
    • 「レベル1を支点としてレベル2を通す」という積層構造が、この時期すでに作品として完成されていたことは特筆すべき点です。

発展期:機能からの派生と数学的探求 翌2015年、富田淳子の著書[4]では、ベトナム現地の技法を通じて、さらなるバリエーションが紹介されます。

  • 機能の装飾化(鱗模様): 作品(23, 30, 31)に見られる、バンドをループさせながら斜めに進む模様です。持ち手をカゴ本体に巻き付けて固定する技法を、装飾として側面全体に応用したと考えられます(Lv.1の亜種)。
  • 幾何学的・数学的応用: 「幾何学模様のバッグ」(p.66)では、赤のフレーム(Lv.0)に白の水平バンド(Lv.1)と白の斜めクロス(Lv.2)を加え、さらにミントグリーンのバンドを72度・108度(Lv.1)に通しています。

現在:技法の定着 その後、2021年頃からの再ブーム以降に出版された書籍では、素材の多様化と共にこれらの技法が統合・洗練され、複雑な模様が前面に現れるようになります。

特筆すべきは、2016年から2020年にかけての出版空白期です。この間、技法書の出版は途絶えましたが、同時にSNSが情報インフラとして定着した時期でもありました。 書籍による図解の代わりに、SNS上の写真を通じて視覚的に情報が交換されたことで、「花模様」に代表されるような、より映える、かつ高度なステッチがユーザー間で広まったと考えられます。

第1次ブーム後期の先駆的な試行錯誤(レベル1の多様化とレベル2の確立)は、この空白期のSNS文化による醸成を経て、現在に至るPPバンドの標準的な装飾技法として、完全に定着したと言えるでしょう。


参考文献

  • [1] 高宮紀子 (2013). 『PPバンドで編む 毎日使えるプラかご』 誠文堂新光社.
  • [2] 高宮紀子 (2014). 『PPバンドで編む オシャレなプラかご』 誠文堂新光社.
  • [3] 古木明美 (2014). 『PPバンドで作る かわいいプラかごとバッグ』 河出書房新社.
  • [4] 富田淳子 (2015). 『PPバンドで作るベトナムのプラカゴ』 文化出版局.